宮城県は、全国海苔生産県の第5位の産地でした。平成21年の宮城県の収穫量はおよそ年間25,000トン(※1,2)、平成22年はおよそ年間14,000トン(※1,2)でした。
海苔養殖は全国的に10月中旬から始まりますが、海苔生産の北限地である宮城では、全国で一番早く養殖に取り掛かることができ、市場に一番早く流通します。親潮(寒流)と黒潮(暖流)がぶつかる栄養豊かな三陸沖で育まれた宮城県産の海苔は「寒流海苔」という名前でブランド化されています。
東日本大震災では、養殖筏や漁船、海苔網など多くに被害が出ました。震災直後、養殖そのものを行えなかったところもあり、平成23年はおよそ年間5,100トン(※1,2)の収穫量でした。しかし、平成24年はおよそ年間13,000トン(※1,2)、平成25年はおよそ年間14,000トン(※1,2)と、回復しつつあります。
※1:「海面漁業生産統計調査」(漁業・養殖業生産統計)(農林水産省)
(http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kaimen_gyosei/)(2015年11月24日に利用)
※2:板海苔、ばら海苔、生海苔類の計(7月〜翌年6月)
宮城県東松島市にある大曲浜は「皇室献上の浜」と呼ばれています。
宮城県の塩竈神社で毎年行われている「奉献乾海苔品評会」では1束10枚、10束単位で海苔の審査を行い、毎年、「優勝」と「準優勝」の海苔を皇室に献上しています。震災前、大曲浜の海苔は6年連続で皇室に献上されてきました。こうした経緯から、大曲浜は「皇室献上の浜」と知られています。
大曲浜の海苔の特徴として、1シーズンに網を3回設置する三期作の採用があります。1つの網で採れる最初の海苔を一番摘み、以降二番摘み、三番摘みと言います。摘み取る回数が増えると、海苔は、風味こそ変わらないものの、固い海苔に変わってしまいます。ですので、例え手間でも、摘み取る回数が少ない三期作を採用することで、常に、口溶けが良く柔らかい海苔にしているのです。(※3)
※3:宮城県漁協矢本支所 皇室御献上の浜
(http://ohmagarihama.jimdo.com/)(2015年11月24日に利用)
海苔養殖にも様々な課題があります。漁師に話を聞くと、大きく分けて3つの課題を聞くことができました。
1つ目は、バリカン症です。バリカン症は海苔の芽がバリカンで刈られたようにちぎれてしまう現象です。「一晩で海苔がなくなり、原因も分からなかった」と漁師は言います。有明海では、目視によるカモの摂食を確認していますが、食害だけが原因とは言えない状態です(※4)。
2つ目は、赤腐れ病です。赤腐れ病は、「赤腐れ病菌」の寄生に起因する病気で、海苔に赤い小さな斑点ができてしまい、最悪、海苔が枯死してしまいます。高水温下で発生することが分かっているため漁師は水温に敏感です。
3つ目は、色落ちです。海苔は海の栄養塩の濃度が低下すると、色落ちが発生し、赤みがかった色に変色します。宮城県では「のり漁場栄養塩情報」として、採水した海水の「リン酸態リン」「三態窒素」の濃度を公開し、色落ちの指標としています。
※4:兒玉昴幸・白石日出人・渕上哲(2014)「有明海区河口域漁場におけるノリ葉体の消失原因について」